耳鳴りの原因はまだ完全に解明されていません。ですので、耳鳴りがどうして鳴っているのか、悩まないようにしてください。その問いに正確に答えられる人はいないからです。
実際の臨床では、耳鳴りが持続している場合、実は難聴を伴っていることがほとんどです。逆に言えば、難聴が治れば耳鳴りは消失します。突発性難聴や中耳炎、耳垢栓塞(耳あか)など、治療できる難聴に伴って生じた耳鳴りに対しては、難聴の治療をしっかりと行います。
しかし、残念ながら耳鳴りが消えないことも珍しくありません。加齢による変化に代表されるように難聴は必ずしも治療できるわけではなく、難聴が治らなければ耳鳴りも残ってしまいます。
肉体的、精神的ストレスが強いときに耳鳴りは大きく聞こえる傾向があります。できるだけストレスをためないようにすることが大切です。
また、耳鳴りは他の何かに集中していると気にならないことが多く、逆に耳鳴りのことばかりを考えていると大きく聞こえてきます。布団に入ったときに耳鳴りが大きくなるのは、周囲が静かで耳鳴りのことばかり考えてしまうからです。耳鳴り以外の、できれば楽しいことを考えるようにしましょう。
耳鳴りは音の大きさや、音の高さが変動することが珍しくありませんので、音が大きくなったとか、音が高くなったとかで一喜一憂しないようにしてください。ただ、耳鳴りの変化に伴って聞こえにも異常(難聴、耳がつまる、音が響くなど)が生じた場合には早めに受診してください。
耳鳴りが残った場合の治療には、① 投薬治療 と、② TRT療法 の大きく2つがあります。それぞれの治療は効果を感じる場合と、残念ながら効果が乏しい場合とあります。また、TRT療法は効果が出るのに通常1年以上かかるといわれています。自分に合った治療の組み合わせを見つけるためには根気強く通院していただく必要があります。
① 投薬治療
② TRT療法 = 耳鳴りに「慣れる」治療
初診時は、ほとんどの方が耳鳴りを危険なものと認識し、体や心に悪影響を及ぼしている「A」の状態です。耳鳴りに対する認識を変えるための「カウンセリング」を行ってまず「B」の状態を目指します。そして、サウンドジェネレーターに代表される「音響療法」を追加することで、最終的に「C」の状態に持ちこむのがこの治療の目的です。
また、補助的治療も平行して行います。
A 良くない状況・・・耳鳴りを危険なものと認識し、悪循環に陥っている
耳鳴りが苦痛→自律神経に失調→全身に影響(不眠、イライラ、肩こり、動悸など) →さらに耳鳴りが苦痛→さらに自律神経に失調・・・
B 耳鳴りは危険なものではなく、無視してよいものと頭で理解する
耳鳴りは聞こえるが気にしない→自律神経が刺激されない→体に影響なし
C 最終目標・・・耳鳴りが気にならない
エアコンや冷蔵庫の音と同じように、意識しないと気にならない環境音になる、する
カウンセリング・・・耳鳴りを正しく理解し、不安や疑問を解消します。
音響療法・・・周囲に音があると相対的に耳鳴りを小さく感じ、耳鳴りへの慣れが促進されます。
③ 補助的治療